第3話「連勝するチーム」


「この間は、夏堂の好投で連敗を脱出しましたが、今日の試合はだめでし ょう」と解説者は試合の始めから宣言してきた。 「そうですね。今日の登板はあの星白ですからね。どんなに頑張ってもい い球は 出ないでしょう」 「そうですよ。捕手も冬山でなくあの張梨ですからだめでしょうね」 「しかし今日のダイナーはすごいスタメンですね。まるで優勝戦で争う様 な感じですね」 「いや、これはきっとダイナーの監督の怒りの現われですね。かって名選 手と呼ばれた彼にとってはあの破廉恥な行為が許されなかったんですね」 「ああ、どっかのアナウンサーが出したあのくだらない罰ゲームですか?」 「ええ、罰ゲームはともかくそれにつられて本気を出してる所にダイナー の監督は怒ってるんですよ。 彼は野球一筋の真面目な人ですから」  そのころダイナーのベンチでは監督がとんでもない指示を出していた。 「あんな下衆な球団と9回もやる必要はない。1回表だ!それ以上の回はな いと思え」 「はい。わかってます」「あの星白なら何点でも取れますよ」  さっそくダイナーの1番バッターが立ち、星白が第1球を投げた。  だが、その球は豪速球でもなくスローボールでもないただの平凡なボー ルであり、それもストレートできたのであった。 「!なんだ?その球は?悪いけどいただいたぜ!!」カキーン!!  いい音と共にボールは大きく飛ぶはずと思ったが、大きな弧を描いてピ ッチャーの星白の所に・・・  それも差し出したグラブの中にあっさり入ってしまった。 「・・・・・なんだ?今の当たりは?」「おい?今のなんで飛ばないんだ?」  ダイナーのベンチも客席も不思議に思った。そう星白はマウンドから離 れずにボールを取ったのだ。  それを見てた捕手の張梨はにやりと笑い、こうつぶやいた。 「さすが、星白さん。ちゃんと計算どおりの球、ぴったし投げてきますな」  そう、星白は捕手の張梨の指示に従って球速・回転数・位置を全て正確 に投げたのであった。  この星白は豪速球やスローボール、変化球は投げられないがストレート で投げられる範囲ならどんな正確な球を投げる事が出来るピッチャーだった。  ただ、相当疲れる上、正確に投げても打たれるだけなので甲子園以来、 その力を全く発揮しなかったのであった。  その星白も実は隠れ亜代佳ファンで同じ隠れ亜代佳ファンであった張梨 と手を組む事となったのだ。  一方、この張梨は計算野球の天才で甲子園ではその手腕を大きく発揮し ていた。  だが優勝に関係ないペターズに入ってからはその計算力を生かして商売 に走ってしまったのだ。  すでに年棒の何倍も稼ぐ商売の方がメインであり野球はただの宣言効果 の為にやっていたのであった。  その張梨が今シーズンは一切商売を仲間に任せて野球に専念する事にし、 かっての計算野球を実践していたのであった。  そう、張梨は星白の技術に目を向けて打たせて取る戦法でいったのであ った。  張梨の思惑どおりダイナーのバッターたちは次々とピッチャーフライで 終わっていった。  放送席も客席も回が増すごとに驚きの目でその様子を見ていた。  ただ、驚きはそれだけではない。まだ5回と言うのにダイナー側の投球 数が200球近くなっていたのであった。  試合はまだ0対0だが、ペターズのバッターたちがどの回も、ちきがい みたいにファールを打ってきてたのであった。  いや、これも張梨の作戦だった。張梨はこれから3連戦行うダイナーの 投手陣をつぶすつもりであった。  そしてダイナー監督もあの正武と同じくペターズには負けたくないと言 う意地から主力の投手陣を全てぶつけて勝負をかけてきた。  だが、結果としては延長12回の須山のホームランで0対1で負けてしま った。 「しかし今日のダイナーの投手陣はすごかったですね。ペターズ相手にあ そこまで出してくるとは思いもしませんでしたね」 「ええ、しかし星白の49球36ピッチャーフライと言うのはまるで魔球 みたいですよ」 「私はそれよりも300回近くもファールが出たのは初めて見ましたよ」 「そうですね。ダイナー側はこれからがきついですね。主力の投手がほと んど使えなくなってしまいましたからね」 「じゃあ、ダイナーとの3連戦は全部負けると?」 「言いたくありませんが負けますね。このままだと...」  翌日、さらに次の日も悪夢を見るかの様にダイナーは惨敗してしまった。  だが、悪夢はこれで終わらなかった。ペターズの勢いは恐ろしくこれ以 降の他球団との勝負を全て連勝で抑えていったのであった。  そしてついにペターズは本当に最下位を脱出してしまったのであった。  最下位脱出の初の番組は夜の10時にもかかわらず視聴率がぐんぐんあが っていた。  そう、オープニングと共にアナウンサーの亜代佳が約束通り水着であら われたからであった。  それも、普通の水着ではなくこの前、連勝で最下位脱出になった場合の 約束を実行したひも水着での登場であった。  ただ、ひも水着と言ってもそれほど細くなくどちらかと言うとタスキ水 着と言った方が正解であった。  ただ、亜代佳の顔も体も真っ赤であった。何せ、タスキの様に太くても その水着はペターズの優勝を祈願しての見事なV字型の水着であったから である。  色は紺色なので透ける事はないが、肩から股間にV字状に2本のタスキ を走らせており、へそを越えたあたりからようやく1本になり、あとはV 字の終着として見事なハイレグでVの字を現してたのであった。  胸元は当然大きく開き、亜代佳のグラビアアイドルなみのEカップの巨 乳の両端が飛び出し丸みの曲線がはっきりと見えている。  さらに、正面からでは見るとそれほど派手には見えないのだが、横から になるとすごい状況になっていたのだ。  タスキ状のひも水着なので横からだと完全に乳房の形がはっきりと見え てしまうのであった。  当然、亜代佳もその事はとっくに気づいており腕を常に折り曲げながら カメラに映らない様に努力していた。 「みなさん。こんばんは。今日は約束どおりひも水着で番組をやりますの でお願いしまーす」顔を真っ赤にしながら少し引きつった笑顔で答えた。  今の亜代佳は恥ずかしさで一杯であり、横から見えるほとんど丸見えの 胸をずっと注意していたのであった。  そんな中、司会者の石谷がにこにこしながら入って来たのだった。 「みなさん。こんばんはっす。今回から司会をやる事になった石谷っす。 今後ともよろしくっす」  そう実は連勝での最下位脱出の賭けはもう1つあり、前の司会者が連勝 で脱出した場合、石谷に司会者を譲ると賭けてしまったのだ。  さらにスタッフ側でもプロデューサーの権限も賭けてしまったので石谷 が司会と番組権限を両方手に入れてしまったのだった。 「西田さん・・いいえ亜代佳ちゃん。その水着なかなか似合ってるっす」 「そ・そう・・・ありがとう・・・・」 「ところで、亜代佳ちゃん。そんなに腕を曲げっぱなしでつらくないっすか?」 「いいえ・・・連勝でうきうきしてつい腕が上がっちゃうのよ」 「・・・とりあえず。そこのカメラさん。みんなバックするっす」 「ん?あのーなぜカメラを?」 「亜代佳ちゃんがあまり気にするので下げたっす。今回は正面だけの画で いってもらうっす。いいっすね?スタッフ」  普段は横にいるカメラも全て石谷の指示で下がり、指示どおり全ての画 が正面からになったのであった。 「・・・あのーありがとう・・・」亜代佳は小声で石谷にお礼を言ったの だが・・・ 「お礼などいいっす。それよりもうカメラは下がったから腕はおろすっす」 「え?あの..でも・・・」 「腕があまりにも不自然っす。いつもどおりきちんとやって欲しいっす」 「・・・・・・・・わ・わかったわ」  亜代佳は石谷の指示で腕をおろしたのであった。 「おおーさすが亜代佳ちゃん。見事な巨乳っすね。サイズいくつっす」 「・・・・・E・・・Eカップです・・・」 「すごいっすね。アイドル顔負けっすね」 「そ・・・そうですか・・・」  石谷は何か様子が変わっていた。始めて出演した時はおどおどした感じ だったが今はまるで別人の様にいやらしい事を言ってくるのであった。 「ところで僕だけが楽しむとペターズのみんな怒るので今から最下位突破 のプレゼントを見せるっす」 「!!あのーそれは番組の最後でやるはずじゃ・・・」 「そう思ったっすか最初の方がいいので今やるっす」 「あの...腕は曲げていいよね?」 「それは当然っす。さあ早く後ろを向くっす」  亜代佳は腕を曲げて後ろ姿をカメラの方へ向けたのだった。  後ろ姿になった途端、スタッフから大きな歓声が響いたのであった。  そう、後ろ姿だけは約束通りのひも水着の姿であった。いいや、ひも水 着ではなく完全なひもが前の水着を支えてるだけであった。  ひもは前が紺色の水着に対して後ろは透明色の細いチューブになってお り、それが途中でV字にわかれ前の水着を支えているのであった。  当然、細いただの透明チューブのため、後ろは完全に裸同然にされてお り、後ろから見ると水着というよりエプロンの方があってる感じであった。  だがこれだと、ただの裸なので石谷の案で背中にペターズのロゴを張ら れ、お尻には、それぞれ”優”と”勝”の2文字のロゴが別々に張られて いたのであった。 「どうっすか。ペターズのみなさん。これが亜代佳ちゃんからのプレゼン トっす」「はい。そうです・・・・」 「本当は普通のTバックだったんすか、亜代佳ちゃんが優勝の2文字を切 り離す様な事は嫌だと言って自分から透明にしたっすよ。ねえ?亜代佳ち ゃん?」 「・・・・は・はい・・・紺色だと分割する様な感じでしたので・・・・ 無・・無理言って・・・わ・私から透明にする様に・・・頼み・・まし・た・・」  亜代佳は石谷が書いたであろう原稿をそのまま恥ずかしさに耐えながら 言った。 「さすが亜代佳ちゃん。ここまでペターズを応援するなんてファンの鏡っす」 「・・・・そんな事、ないですよ...」 「さてと、もう1つあるっすよね。プレゼントが・・・」 「はい、今から優勝祈願のエールをやります...」  優勝祈願のエール。それは石谷が考えたもので、この姿のままで「ペタ ーズ、頑張れ!!」を3回言うのだがいろいろと注文が来たのであった。 まず始めの”ペターズ”のフレーズで左・右・左・右と2回大きくお尻を 振って”頑張れ!!”のフレーズでお尻を突き出すのであった。  これを3回繰り返し、最後の1回は思い切りお尻を突き出す事になって いたのであった。 「ん?どうしたっす。早くやるっすよ」 「は・・はい・・では・・エールいきます!!」 「ペターズ、頑張れ!!」ふりふりぽんっ♪「ペターズ、頑張れ!!」  ふりふりぽんっ♪「ペターズ、頑張れーーーー!!」ふりふりぽぽんっ♪  亜代佳は恥ずかしさに必死に耐えながら恥かしいお尻のエールを送った。 「うん。見事っす。ペターズのみんな。亜代佳ちゃんがここまで応援して るんだ。もっとがんばるっす!!」 「・・・・頑張ってください....」  ようやく正面に向かう事が出来、やっと番組は開始された・・・ 「あのー、今回からこの番組は野球のみを解説しますので了承して下さい」 「そうっす。他のスポーツ結果は別の番組で見るっす」 「と言う事なのでまずは今日の試合の内容から・・・」 「亜代佳ちゃん。いつまでもその格好で立ってると可哀想っす。早くこっ ちのデスクに座って解説するっす」 「!!あ・あのー別に私はここでも・・・」 「何言ってるっす。そんなにサービスする必要はないっす。さあ早く!!」 「・・・・・わ・わかりました...」  亜代佳はそおっと注意して椅子に座る事にした。そう何せこのV字型水 着はかなり無理がある形なので座ると確実にたるみが出てしまうのである。  一応、アンダーヘアーと乳房には両面テープで固定して見えない防止は してあるが胸の方は恥ずかしさで汗をかいたせいかもうほとんど限界に近 いのであった。  例えはがれたとしても正面から撮ってるTV上やスタッフには見られる 事はないのだが横にいる石谷には、はっきり見られてしまうのであった。 「どうしたっす?そんなゆっくり座って?椅子はいつもと同じっすよ」 「・・・ちょっと膝が痛くて・・・」  亜代佳は何とかたるみを出さずに座る事が出来たが、この緊張感の汗で もう胸の両面テープはだめになってしまった。 「ん?亜代佳ちゃん?何そんなに背筋を伸ばしてるっす?」 「え?いつもこうよ。アナウンサーですから...」 「でも、そんなに伸ばすと紺の水着でもポッチが目立つっすよ」 「!!あっ」  石谷の言った通り背伸びをしたせいか少しくぼみが出ていたのであった。  ただ、紺の水着の為それほど目立たないのだが、やはり恥ずかしく石谷 の言う通りいつもの姿勢に戻しポッチを目立たなくする事にした。  当然、たるみを少し出す事になり恥ずかしさで固くなっていた乳首が両 面テープを押し上げてきたのだ。  胸と同様、人より少し大きい亜代佳の乳首はタスキ部分を上げてしまい 横から見れば完全に起立した乳首が無防備のままで覗けてしまうのであっ た。  ひくひくと揺れている乳首を石谷に見られてると思うと亜代佳は悔しく てたまらない。  一方、石谷は平然と亜代佳の乳首を楽しんで見ており、スタッフやカメ ラには映らないデスクの原稿に小さくこう書いてきたんだった。 <亜代佳ちゃんって乳首大きいっすね。口にはしませんので安心するっす。> 「!!」  屈辱でいっぱいの亜代佳であったが、生放送のせいで何も言えず、その まま解説を続けるしかなかった。 番組の終わりごろになると、恥ずかしさでかいた汗でタスキ部分が完全に 離れてしまい、丸見えになったおっぱいが揺れるのを石谷が楽しんで見て るのを知って、悔しさでいっぱいになってきた。 (もう少しの我慢よ..ううぅ) 「で・では、今日はこれで終わります。おやすみなさい」 「みなさん、おやすみっす。最下位にならない限り、明日もこの姿なので 楽しみにしてるっす」  そう、石谷の権限で亜代佳はペターズが最下位にならない限りこのV字 をしばらく続ける事になってしまったのだ。  明日もこんな事をされると思うと皮肉な話しだがペターズには負けて欲 しいと初めて思う亜代佳であった。


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